邂逅
注意事項
第一に、『新・天照奇譚』を踏まえたうえでの捏造話です。※ただし、既読未読にかかわらず読めます。
第二に、普通にウシアマ。いやウシ→アマ。もしくは、ウシ→→→イス(腐要素なし)。
第三に、普通の方の持っておられるウシワカイメージと若干(もしくは相当)違っている可能性があります!ウシワカのイメージを崩したくない方は、そのままブラウザバックでお戻りください。
最後に、ナチュラルにアマ公女性説を選択しておりますのでご注意願います。
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邂逅
とても静かな水面。枯葉の落ちる音まで聞こえてきそうな。
曇天をひっくりかえして、そのまま水の中に閉じ込めたような、鈍い光を放つ、澄んだ水面。一呼吸するだけで、清廉な空気が体の隅々まで洗い流すように駆け抜ける。木々はまるで太古の神殿の柱のように垂直にそびえ、厳然とその威容を誇っていた。先ほどまで真っ黒な霧に覆われて、溢れる瘴気と呪いと怨嗟とが満ち満ちていた場所とは思えない。
久しぶりに、本当に久方ぶりに見たアマテラスは、前にもましてのんびりとした空気を纏っていた。穏やかで、安心しているような。以前のようにずっと戦いのために神経を張っているといった空気が随分薄れているような気がする。
(今の相方くんと、そんなに相性がいいのかな。――妬いちゃうね)
苦笑いとも、寂しさともとれる笑みをこぼし、それでも薄く開けたまぶたの奥の瞳には、悪戯っぽい光がちらちらと瞬いていた。
待ち伏せして、声を掛ける。驚きの声。“まるで”見知らぬ反応を示し、うなり声を上げる白い獣。笑顔がこぼれそうになって、それをかみ締めて飲み下す。
いけないいけない。笑ったら全部台無しじゃないか。
初めてじっくりと見る、相方の妖精。緑色で、元気が良くて、きっと意地っ張り。頑固で、優しくて、絶対に彼の祖父にそっくりだ。
「まるでゴムマリ」
口元で呟いて、あんまりぴったりなので可笑しくなった。ふと、こんなにも快い笑いは、いつ以来感じていなかっただろうと思った。長い間空白だった胸の中に、ぴったりとおさまっていく感情たち。
――わくわくする。
例えこれが刹那の感情であったとしても、呪われし定めは変えられないとしても、それでも、この気持ちは変わらず存在したのだろう。
「ミーは、これでなくては語れない男だからね」
アマテラスの力が足りないことなど百も承知。それを、彼女だって承知している。彼女は、自分を覚えているのだろうか。あの辛い記憶を、覚えているのだろうか。今のままの力では依然踏んだ轍をまた踏むだけ。
使命があるのだ。あの、何より気高い白い獣には、強くならねばならないという義務が。たとえ何もかも覚えていなくとも、何をすべきかはわかっているのだろう。もしくは、その道しか彼女には見えないのかもしれない。道が、残っていないのかもしれない。
――それならば、あまりにも……。
そう思いかけて、思考を止めた。一体、自分に彼女の何が理解できるというのか。もっとも大切なことは、彼女の意思を理解することではなく、己ができる最善を尽くすこと。
また生まれ変わった彼女は、今度こそ幸せになれるのだろうか。
愚問だ。心の中で自嘲する。彼女が幸せでないときはないのだ。苦痛も、悲しみも、彼女を貶めはしない。だからこそ白昼の夢にみるほどに、じりじりと胸を焦がし、恋にも似た感情を抱き、憧れるのだ。
(多分、覚えていたって、そんな素振りはちらとも見せてくれないんだろうね)
今しも、アマテラスの爪をぎりぎりまで引きつけてから、なんとか身を翻した。はじけるように衣が裂け、糸くずが宙を舞う。だんだんと、彼女の身のこなしが白刃のような切れを帯びてくるのに、時間は掛からなかった。
今も穏やかな表面の下に、どれだけの感情を隠しているのか。あの優しい気性の神が、何を思って妖怪を斃しているのか。これからも、倒し続けるのか。
自分に向ける牙と爪が、どんな悲しい思い出を引き起こしているのか、想像もつかない。
辛い思いをさせているだろうね。どんなにか、寂しいだろうね。
――けれど、わくわくしてしようがないんだ。
自分が罪深いことはよくわかっている。
君と、再び出会えた。
それだけで、どうしようもなく高鳴る鼓動が、耳元でうるさい。
ねえ、ゴムマリくん。君はきっとアマテラス君を、助けてくれるよね。
逃げてもいい、嫌がっても、時々なら、弱音だって吐いたっていい。けれど、進むしかない。行動するしか、今を変える手立てはない。
何もしないこと、見て見ぬふりは悪だ。足掻いて、足掻いて、それでもどうしようもなくたって、吐き気を覚えるぐらい自分が無力に感じても、それでも動くのをやめちゃいけないんだ。
涙など流す暇はない。迷う暇があるのならば進め。それしか道はないのだから。
今、自分にできることは、この刀を振るうこと。
そして願わくば、君がふるうのは刀ではなく、筆であることを祈る。
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うわあ。語ってしまった。これって、引きますか、引きますよね。
ウシワカがこう思ってたらいいなあっていうのを、詰め込んでみました。
ウシワカは、強い人だと思います。脆いかもしれないけど強い!でなければヒミコ姉の行動を、何が何でも阻止して助けようとかしそうだなあと思うんです。
表面の「おちゃらけ」は、アマテラスも、ウシワカも合意というかある意味共犯関係的に考えております(でも実際楽しんでる)。ウシワカさんは完全にイッスンのお父さん的思考回路になってるといいな、とか書きながら思いました。ちょっと小憎らしいゴムマリだけど、大事な大事なマム(慈母)を守ってやるんだマイ・ソン!(ェ!?)みたいな。
そして、ウシワカは恋を通り越して愛しちゃってますから。ウン。イッスンはアマに恋してたっていいよ。パパはきっと見守ってくれる。多少ハンカチ噛みながら(笑)
…読み返しても、多分意味不明で通じないよなあ。コレ。うう、早速自己満発揮。 2008.02.05
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最初の方でウシワカが「笑ったら台無し」といっているのは、彼の顔の筋肉が笑う形になるという意味ではなく、こー嬉しそうにしちゃだめって意味です
気になったので付け足しました。 2009.01.04追記
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